KNOWLEDGE — AI NEWS
Grok Imagine|商品を固定したまま動画生成
xAIが2026年7月31日、動画生成モデル「Imagine Video 1.5」に画像と音声の参照機能を追加しました。参照画像1枚につき顔・商品・場所のいずれか1つを固定でき、1回の生成で最大7枚まで使えると公式サイトに記載されています。参照機能は発表時点で米国が先行しており、日本のEC事業者がいま進められる準備は何かを整理します。
Summary
この記事の要点
動画生成の品質そのものではなく、EC事業者が商品動画を作るときに何が変わるかに絞って整理します。要点は3つです。
「同じ商品のまま場面だけ変える」ができるようになった
参照画像を渡すと、その要素が生成のあいだ固定されます。公式には「参照画像はそれぞれ1つの要素を固定する。顔、商品、場所」と記載されています。人物を保ったまま場面を替える、場面を保ったまま人物を替える、両方を保って動作だけ替える、という指定ができます。
参照機能は発表時点で米国が先行し、日本での提供は公式に確認できていない
画像と音声の参照は、米国の上位プランであるSuperGrok HeavyとSuperGrok Plus向けに提供が始まり、数日かけて全ティア(契約プランの各段階)へ広げると記載されています。日本での提供時期についての記載はありません。一方でテキストから動画への生成とネイティブ1080pは一般提供とされています。
APIでも使えるため、商品数の多いストアでは自動化の対象になりうる
画像参照・テキストから動画・ネイティブ1080pがxAI APIのモデル
grok-imagine-video-1.5で利用できると記載されています。音声参照は申請制です。ただし今回の発表に動画生成の料金の記載はありません。
Basics
前提:動画生成の4つの入力方式
動画生成AIは「何を手がかりに動画を作るか」で方式が分かれます。今回追加されたのは4つ目の参照です。すでに把握している方はこの節を飛ばして構いません。
| 方式 | 渡すもの | EC実務での意味合い |
|---|---|---|
| テキストから動画 | 文章の指示だけ | 素材がなくても作れる。ただし出てくる商品は実在の自社商品ではない |
| 画像から動画 | 起点となる1枚の静止画 | 商品写真を動かせる。ただし場面を変えるたびに別の起点画像が要る |
| 参照(リファレンス) | 固定したい要素の画像・音声。公式の区分は「顔・商品・場所」で、本記事では「顔」を出演者の意味で使う | 商品を固定したまま場面や動作を変えられる。同じ商品で複数本を作りやすい |
| ネイティブ1080p | —(出力解像度の指定) | 拡大処理ではない解像度で出力される。商品ページやSNSでの見え方に関わる |
「画像から動画」と「参照」の違いは、前者が始まりの1コマを決めるのに対し、後者は最後まで変えてほしくない要素を指定する点です。商品動画では後者のほうが扱いやすくなります。生成AIを業務へ組み込む全体像は生成AIのEC活用で整理しています。
Announcement
公式発表の要点
xAIは2026年7月31日、公式サイトで「Imagine Video 1.5 with References」を発表しました(出典: xAI公式サイト)。同ページには前月にImagine Video 1.5を公開したと記載されており、今回はその追加機能という位置づけです。公式に記載されている内容は次のとおりです。
| 項目 | 公式に記載されている内容 |
|---|---|
| 発表日・主体 | 2026年7月31日、xAI |
| モデル名 | Imagine Video 1.5(API上の識別子はgrok-imagine-video-1.5) |
| 参照の単位 | 参照画像1枚が1つの要素を固定する(顔・商品・場所)。1回の生成で最大7枚 |
| 音声の参照 | キャラクター画像と音声の参照を渡すと、全シーンで同じ顔と同じ声が保たれる |
| 参照機能の提供範囲 | 画像と音声の参照は発表日(2026年7月31日)より米国で、SuperGrok HeavyとSuperGrok Plusを対象に grok.com のimagine機能とiOSアプリで提供開始。数日かけて全ティアへ展開 |
| テキストから動画 | 開始画像なしで生成できる。画像生成と画像から動画への生成を組み合わせた仕組み |
| 解像度 | ネイティブ1080pに対応。テキストから動画・画像から動画の双方で利用可能 |
| 一般提供の範囲 | テキストから動画とネイティブ1080pは grok.com のimagine機能、iOSアプリ、Androidアプリで一般提供 |
| API | 画像参照・テキストから動画・ネイティブ1080pがxAI APIで利用可能。音声参照は申請ベース |
提供範囲について補足します。参照機能とそれ以外で提供状況が分かれている点が今回の発表の読みどころです。テキストから動画への生成と1080p出力は一般提供とされています。一方で記事の主題である参照機能は、発表時点では米国が先行し、そこから全ティアへ広げる段階と記載されています。日本国内での提供時期および日本語での音声参照の品質について、公式には確認できていません。本記事の執筆時点(2026年8月3日)で確認できるのはここまでです。
Analysis
セルフプラスの見解 — 効くのは「本数」ではなく「同一性」
ここからは公式発表を踏まえたセルフプラスの分析で、事実の要約とは分けて記載します。動画生成AIは以前から使えましたが、EC事業者が本格的に使えなかった理由ははっきりしています。生成するたびに商品の見た目が変わってしまうからです。参照機能はそこに直接効きます。
1. これまで商品動画にAIを使いにくかった理由
広告用の動画は1本では足りません。用途別、季節別、媒体の縦横比別に複数本が要ります。従来の生成AIでこれをやると、同じ商品を指示しているのに毎回わずかに形や色が違うものが出てきました。並べて配信すると別商品に見えるため、実務では使えませんでした。
| 作りたいもの | 従来の生成AIでの問題 | 参照機能が入ると |
|---|---|---|
| 同じ商品の「屋内」「屋外」「夜」の3本 | 3本とも商品の形状・色味が微妙に違う | 商品の参照画像を固定し、場面の指示だけ変える |
| 同じ出演者で色違い商品を紹介する複数本 | 出演者の顔が本ごとに変わる | 顔の参照を固定し、商品の参照だけ差し替える |
| 同じ店舗を背景にした季節ごとの告知 | 背景の店内が毎回別の店になる | 場所の参照を固定し、出演者と動作を変える |
つまり価値は「動画が作れること」ではなく「シリーズとして成立すること」にあります。同じ商品が別物に見える素材を並べると、買い手は情報を照合できず判断を保留します。動画の追加が購入率にどう効くかを見る前提として、CVR(コンバージョン率)の考え方を整理しています。
2. 日本のストアがいま試せる範囲は限られる
ここは正確に押さえる必要があります。参照機能は発表時点(2026年7月31日)で米国が先行し、そこから数日かけて全プランへ広げるとされていました。日本での提供時期は公表されていません。一方でテキストから動画への生成と1080p出力は一般提供とされています。したがって日本のEC事業者がいまできるのは、参照なしの範囲で出力品質と社内フローを確かめることまでです。
「使えるようになってから考える」ではなく、使えるようになった時点で回せるように準備しておく、という順番をおすすめします。準備の実体は撮影素材の整理であり、これはどの動画生成サービスを使う場合でも無駄になりません。
置き場所によっても判断が変わります。Shopifyでは商品のメディアとして動画を登録できますが、そこに置いた動画は色や質感を確かめる材料として見られます。一方、訴求用のバナー枠やSNS広告の導入部分に置く動画は、世界観を伝える役割が中心です。生成動画は後者から始め、前者は実写を残すのが安全です。カート別の進め方はShopifyのAIコマース対応支援とecforceのAIコマース・AI活用支援で扱っています。施策の進め方はShopifyサイトAIグロース支援とShopify以外のECカート グロース支援で扱っています。
3. 生成した商品動画には、実物との差という固有のリスクがある
ここが最も注意を要する点です。生成された映像は実物の撮影記録ではありません。参照画像で商品を固定しても、光の当たり方、質感、色味は生成のたびに解釈されます。実物より良く見える映像を商品ページに置けば、景品表示法上の優良誤認にあたる可能性があります。返品やクレームの原因にもなり得ます。
| 用途 | 生成動画の適性 | 理由 |
|---|---|---|
| 利用シーンのイメージ、世界観の提示 | 使いやすい | 実物の仕様を主張していないため、差が誤認につながりにくい |
| SNS広告の導入部分、サムネイル的な用途 | 条件付きで使える | 誘導先で実写と仕様を示す前提なら成立する |
| 色・質感・サイズ感を伝える商品ページの主要素材 | 向かない | 購入判断の根拠になるため、実物との差がそのまま誤認になる |
| 化粧品・健康食品の使用前後を思わせる表現 | 使わない | 薬機法の観点で問題になりやすく、生成物では裏付けが取れない |
判断に迷う場合は「この映像を根拠に買った人が、届いた実物を見て納得するか」を基準にすると整理しやすくなります。購入前後のつまずきを減らす観点はCVRが上がらない課題で扱っています。
4. 人物と声の参照は、権利の確認が先になる
音声参照によって「同じ顔と同じ声」を全シーンで保てるようになりました。自社の代表や社員、起用した出演モデルの顔と声を使う場合、生成AIへの参照利用まで許諾に含まれているかは別問題です。撮影時の契約書に生成AIの学習・参照利用に関する条項がなければ、追加で同意を取るのが安全です。
また、他社商品や著名人の画像を参照に使うことは、権利面でも各サービスの利用規約の面でも避けるべきです。ここは技術的に可能かどうかとは別の判断になります。
5. APIでの自動生成を考えるのは、本数が積み上がってからでよい
参照機能はAPIからも使えるため、商品点数の多いストアでは自動生成が視野に入ります。ただし自動化そのものに固定費がかかります。素材の命名規則を決め、生成結果を並べて検品する工程を作り、失敗した生成をやり直す仕組みを用意する必要があります。手作業で10本作る手間より、この土台を作る手間のほうが大きい段階では、自動化は割に合いません。
目安として、同じ形式の動画が継続的に数十本単位で必要で、かつ商品の入れ替えが頻繁に起きるなら検討する価値があります。単発のキャンペーンで数本作るだけなら、手作業のほうが早く終わります。この目安はセルフプラスの判断基準であり、公式発表に記載があるものではありません。生成AIを業務へ組み込む段階の進め方は生成AI業務効率化で扱っています。
公式発表に料金と日本での提供時期の記載はありません
今回の発表には、動画生成の課金体系(1本あたりか、秒数か、解像度で変わるか)についての記載がありません。SuperGrok HeavyとSuperGrok Plusという契約プランの名称は出ています。ただし日本からこれらを契約した場合に参照機能が使えるかどうかは、公式に確認できていません。導入の可否を検討する段階では、料金と提供地域を公式ドキュメントで再確認してください。本記事は2026年8月3日時点で公式サイトに記載されている内容のみを根拠としています。
Action
明日から何をすべきか
参照機能が日本で使えるようになるのを待つ必要はありません。準備の中身は素材とルールの整備で、他の動画生成サービスを選んだ場合にもそのまま使えます。
主力商品を3つ選び、参照に使える静止画を揃える
参照は画像で渡します。背景が抜けている、正面・斜め・寄りが揃っている、色が実物に近い、という条件を満たす静止画が要ります。すでに撮影済みの商品写真がこの条件を満たしているか確認し、足りない角度を次の撮影で追加します。この作業は生成AIを使わない場合でも商品ページの改善に効きます。
生成動画の使いどころを社内ルールとして先に決める
「利用イメージには使う」「色・質感・サイズの説明には使わない」「薬機法の対象商材には使わない」といった線引きを、使い始める前に文書にします。作ってから判断すると、公開の直前に止められないまま出てしまいます。ルールは1ページで足ります。
人物素材の許諾範囲を確認する
社員やモデルが写っている既存素材について、契約書に生成AIでの利用に関する記載があるかを確認します。無ければ、次回の撮影時に条項を追加します。声を使う予定があるなら音声についても同様です。あとから遡って同意を取るのは手間が大きくなります。
同じ7月31日に出たOpenAIの発表はAIの費用対効果はモデルより仕組みという記事で扱っています。AI経由の購買が広がる流れ全体はAIコマースにまとめています。
FAQ
この発表に関するよくあるご質問
参照機能は日本のストアでも使えますか。
公式には、画像と音声の参照は米国でSuperGrok HeavyとSuperGrok Plusを対象に提供を開始し、数日かけて全ティアへ広げると記載されています。日本での提供時期は公式に確認できていません。テキストから動画への生成と1080p出力は一般提供とされています。
生成した動画を商品ページにそのまま載せてよいですか。
生成映像は実物の記録ではないため、色や質感が実物と異なることがあります。実物と違う印象を与える表現は景品表示法上の問題になり得ます。利用イメージとして使い、仕様や質感の説明は実写と文章で行う運用をおすすめします。
APIから使えますか。料金はいくらですか。
公式には、画像参照とテキストから動画への生成、1080p出力がxAI APIのgrok-imagine-video-1.5で利用できると記載されています。音声参照は申請制です。動画生成の具体的な料金は今回の発表に記載がなく、公式に確認できていません。
